金融危機の影響

 世界的な景気減速が大小さまざまな形で表れており、そのほとんどは気持ちを暗くさせるものだが、風変わりなものや人間の想像力を反映するようなものもある。以下は、金融危機の影響を受けた世相を反映する世界各地の出来事。

 ◎投資していたヘッジファンドが倒産し、銀行に自宅を差し押さえられ、ベントレーを手放すことになっても、新年をキャビアで祝うことは可能。ただ、キャビアといっても偽のキャビアだ。

 英国のスーパーマーケットチェーン、ウエイトローズは、珍重されているチョウザメの卵に似た触感と味が楽しめるArenkha MSCを、本物のキャビアの数分の1の値段で販売している。Arenkha MSCは「くんせいにしたニシンにイカ墨とレモン汁と香辛料とあわせた」ものだという。

 ◎モスクワの日本食レストランNiyamaでは、同国の主要株式指数であるRTS指数に価格を連動させた定食をランチに提供している。定食「RTS」ランチの値段は、その日のRTS指数の寄り付きの27%。16日はRTS指数が690ポイントで取引が始まったので、ランチの値段は186.50ルーブル(約630円)となる。RTS指数が最高値を付けた5月にこのランチがあったとしたら、その価格は現在の4倍だった。

 ◎かつて裕福だった人たちがグッチの鞄やロレックスを売ろうとした高級品の委託販売店が不調だ。ニューヨークで最高の中古品取扱店の一つとされているTokio 7は、状態が極めて良い新しい委託品以外はすべて断っている。同店の経営者マコト・ワタナベ氏は「すべての人がわずかのお金を必要としている」と話した。

 ◎シンガポールの中古の高級腕時計市場では、顧客の割安志向が強まっているという。1万シンガポールドル以上するパテック・フィリップを購入していた層が、今では5000シンガポールドル以下のモデルを選んでいる。中古時計販売を手掛けるアルビン・ライ氏は「ビジネスは20─30%減速している」と語った。

 ◎英国ではエリザベス女王にさえも影響が及んでいる。英サン紙は、エリザベス女王スコットランドにあるバルモラル城のギフトショップで最大50%の値下げを実施したと伝えた。セールでは、通常よりも6ポンド値下げされたバルモラル・ウィスキーなどが売られた。

 ◎米国では、金融危機によって結婚指輪や婚約指輪を売ることになったカップルもいる。ウェブサイトidonowidont.comは当初、上手くいかなくなった関係を整理すると同時に現金も得られるようにする場所だった。同サイトのデビッド・ベッカー最高経営責任者(CEO)は、今秋のサイトのトラフィックは145%増だと述べた。

 ◎失業がウイルスのように広がる中、スロベニアの雇用当局は新たに職を失う人々が失業手当を需給しやすい環境を作るため、減益発表した会社に担当者を送り込んでいる。

 ◎英国ではクリケット選手や犬が痛みを感じている。英携帯電話大手ボーダフォン・グループは10億ポンドのコスト削減の一部として、英国クリケットチームのスポンサーを終了すると発表した。英国の有名な動物保護施設バターシー・ドッグス・アンド・キャッツ・ホームは、運営が限界まで来ており、その一因は金融危機だという。

 ◎米コネティカット州グリニッチはウォール街で働く人々など高所得者向けのベッドタウンで、金融危機の影響を激しく受けたヘッジファンドの世界では「首都」とも言われる。グリニッチは米国の多くの都市と同じように、2009年は大幅な予算不足に直面する。グリニッチは3100万ドルの財政赤字が予想され、賃金上昇や雇用の凍結、固定資産税の引き上げなどの計画を進めている。
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