世界一へ


夏見は戸惑っていた。

 「何が何だかわからなかった」

 2008年2月、ストックホルムで行われたノルディックスキーW杯距離。五輪、世界選手権、W杯を通じて、これまで日本の距離選手が立ったことがない表彰台に、自分が立っている。

 29歳で咲かせた“大輪の花”は歴史に残る快挙だけに、面食らうのも当然だ。

 170センチという恵まれた肢体をスキーウエアに、大きな瞳はゴーグルで隠す。クロスカントリー、略してクロカンという地味〜に見える競技をしていても、存在感は光っていた。

 1998年長野五輪はテスト走者。五輪初出場となった2002年ソルトレークシティーでは1・5キロスプリントで12位、06年トリノ五輪では福田修子と組んだ団体スプリントで距離で日本女子最高の8位に入賞。


 07年は、2月に札幌で行われた世界選手権のスプリント(1・2キロ)で5位、12月にもW杯のスプリント・クラシカルで5位に入った。ゆっくり、ゆっくり頂点に近づいている。

 スキーのスプリントは、他の選手との接触…というより激しいぶつかり合いやスキーを踏まれることなどに対応できるフィジカルの強さと戦術が必要となる。円熟期を迎えてなお成績が伸びるのは、年齢と経験を重ねることによって得た、絶妙な試合運びによるものだろう。

 10年のバンクーバー五輪まで、あと1年余−。
(MSN)