円高の今がチャンス!?

 記憶に新しいサブプライム問題。不動産のバブルが原因の一つですが、世界のどこかでバブルが崩壊すると、必ずと言っていいほど、日本のバブルが比較に出されます。海外の経済学者のなかにも、日本のバブルを専門に研究している方もいます。それだけ、日本のバブルは規模も大きく、対処するのが難しいものだったのです。

 バブルは為替にも大きな影響を与えたり、また、逆に為替がバブルに影響を与えたりもしています。そんな関係について、経済学を噛み砕きながら見ていくことにしましょう。

 まずその前に、バブルとは何でしょう?バブルとは、「そのモノの価格が、そのものの本当の価値よりもかけ離れて、大きく上昇すること」です。期待が一人歩きして、欲望とともに大きく膨らむことと言ったほうがイメージしやすいかもしれません。

 また、バブルというと不動産や株を思い出す方が多いかもしれません。特に不動産は為替とは縁遠いのではないかと思う方もいると思います。しかしそんなことはありません。

 確かに、不動産はその名の通り「動かない資産」です。一見グローバルとはほど遠く、為替をイメージすることができないかもしれませんが、不動産を代表とする物価や金利などと為替は密接に結びついています。

 それでは、日本のバブルについて見ていきましょう。

日本のバブル〜序章

 時代はさかのぼること30年前。ベトナム戦争により、米国が不況になっている頃にさかのぼります。戦後、金本位制を捨てた米国は、自由に通貨を発行できるようになりましたが、他の国も自由に通貨を発行しているので、高金利の魅力でひきつけなければ、発行してもさばききれません。米国は不景気を打開するために、ドルを高金利にしてきました。高金利の国にはお金が集まり、為替相場もドル高の時代が続きました。

 経済学の教科書には、「貿易収支をはじめとする経常収支が黒字の国は通貨が高くなり、逆に赤字の国は通貨が安くなる」と書いてあります。相場が変動することで、経常収支の黒字赤字を平均させているのです。

 簡単な例をあげましょう。もし日本で作ったモノをアメリカに売ると、売ったメーカーはドルを手に入れます。ですが、日本の従業員に給料を払ったり、下請けに加工費を支払ったりする場合には円で支払わなければいけないので、米ドルを売って日本円を買う必要があり、そのため円高ドル安になるのです。

プラザ合意〜バブル発生へ

 そんな考えからすると、アメリカには日本と喧嘩(貿易摩擦)しなければいけないくらいの経常赤字があった訳ですから、経済学上はドル安になるはずなのですが、高金利を維持していたため、ドル高になっていたわけです。

 ですが、ドル高だと自国の輸出産業を守ることはできません。いつまでも貿易摩擦は解消されないわけです。そこで、プラザ合意がされました。

 プラザ合意では、各国が手を取り合って、米国の要望のもとに、ドル安自国通貨高という流れを作ることを目的としたものでした。具体的には、日銀がドル売り円買いの介入をすることで、為替相場円高ドル安の流れにもっていったわけです。

 しかし、一度円高についた流れはなかなか止めることができず、行き過ぎた円高を止めるため、金利の引き下げと、円売りドル買いの介入をしましたが、1987年の暮れには、(その当時はありえなかったレベルである)120円前半まで円高が進んだのです。

 日本は円高のままでは自国の産業に悪影響を及ぼします。行き過ぎた円高を是正するために、金利の引き下げと市場での円売りの介入をしました。それが原因で、日本には多くのお金が余るようになりました。そのお金は、不動産や株に向かっていくことになるのです。バブルの発生です。

バブル発生後〜円高対策

 ここで日本がとった政策が「内需拡大策」です。円高のため、輸出がダメなら国内でということです(どこかの首相も給付金でこれをやろうとしているのでしょうか)。

 その頃の国民は、「内需拡大という素晴らしい政策によって新たに成長しているんだ」という希望から、ほとんどの企業と個人が借金をしながら、土地や株を買っていくこととなりました。そして、バブルがますます大きくなっていったのです。「そのモノの価格が、そのものの本当の価値よりもかけ離れて、大きく上昇」してしまえば、元に戻るのも時間の問題です。

 バブル崩壊の原因は、一つとは言えないと言われていますが、金融政策・土地政策などが主な原因といわれています。

 そして、後に残されたのは借金の山です。借り入れによって投機(当時は投資と思っていたでしょうが)をしていた不動産・ゼネコン・銀行などは、次々と潰れていきました。もっと早く適正に対処すれば「失われた10年」にならなかったということを聞きますが、結局私の印象では15年はバブルの悪夢に引きずられたと思います。

サブプライム問題

 これはもうご存知だと思いますが、サブプライム問題は、アメリカの不動産のバブルが起きたことが原因の一つですが、その裏には、ローン証券をヘッジファンドなどが多額の資金で買い集めていたことも原因の一つです。買う人がいなければ、証券化できませんから。ですが、その後押しをしていたのは低金利の日本でした。円キャリー取引に代表されるように、空前の低金利の日本から資金調達をして、海外の投資に回っていたため、全世界的にお金が余っていたのです。日本から円を借りてドルに換えるわけですから、必然的に日本は円安になっていました。今はその逆で、ドルの暴落と世界中の金利安により、円高になっています。

これから

 数ヶ月で数十%の上昇、数年で数百%の上昇が、バブルの一つの目安と言われていますが、バブルを予知することはできません。

 アメリカでは、オバマ新大統領が誕生して、新しいアメリカに生まれ変わろうとしています。今までにない財政出動、経済政策をとっていくのでしょう。また同じように、世界中でも今までにない政策などがとられていくことと思います。

 これからの時代は、政策が為替を左右すると思います。どんな政策がとられて、その結果、為替相場が上がるか下がるかはわかりません。「円高の今がチャンス」などという広告に騙されてはいけません。こんな時こそ、外貨で稼ぐのではなく、外貨で守る意識が必要かと思います。


コラムニスト 横山 劉仁
提供:株式会社FP総研
(MSN)