韓国芸能界の暗部

 韓国で若者に爆発的な人気を博したドラマ「花より男子(だんご)」(韓国版)に出演していた女性タレント、チャン・ジャヨンさん(享年29歳)が3月に自殺し、その遺書などからスポンサーなどに対して酒の接待だけでなく、性の接待まで強要させられていたことが明らかになった。その文書の中に、チャンさんが接待した韓国の要人らのリストも含まれていたことから、一体誰が相手だったなのかが注目されている。韓国芸能界における、こうした「性上納」のうわさは以前からあり、7年ほど前にも捜査当局が動いたことがある。韓国芸能界の暗部を探ってみた。(ソウル 水沼啓子

 7年前の「韓国日報」(2002年8月13日付)は、一部の芸能プロダクションが韓国の財閥2世や政界などの関係者に、人気女性タレントや新人女性タレントらに性の接待をさせていた疑いがもたれ、売春を斡旋(あっせん)したとして本格捜査を始めたと報じている。結局、ソウル地検は内偵捜査のみで、このときは立件を見送った。

 ハンナラ党の洪準杓議員は当時、国政監査の場でこの問題を取り上げ、民主党(当時は与党)の3議員が性上納にかかわったと追及。「芸能プロダクションが国会の関連常任委員会に対してロビー活動を行い、関係議員が放送局に圧力をかけ、その結果、所属芸能人が頻繁にテレビに出演した」と明らかにした。

 しかも、「政界の関係者が検察に圧力をかけたため、捜査は打ち切られ、捜査を担当したソウル地検の部長は地方に左遷させられた」と糾弾している。

 こうした韓国芸能界の「性上納」については、芸能記者が同年、出版した小説「スポンサー」に記されている。著者は「ここに登場する人物はすべて架空の人物だが、大部分は実在の人物をモデルとしており、ほぼノンフィクションに近い話といえる」とし、生々しい韓国芸能界の裏事情を明らかにしている。

 著書には「タレントの売春はきのう今日のことではない。芸能人の売春は根が深い。80年代初めにいわゆる秘密料亭事件があった。マンションに“秘密料亭”を準備し、タレントたちが金持ちの遊び人たちと宴席を設け、セックスまで楽しんでいた」と描かれている。

 さらに「政治家とタレントのスキャンダルは今に始まったことではない。その昔は大統領の夜の相手を務めることは芸能人として不可抗力なことだったが、今は芸能人たちが自発的に権力者たちとのセックスコネクションを持っている。つまり彼らの力を借りて、芸能界で何か利益を得ようということだ」と記されている。

 「セックスコネクションが構造化しているため、ドラマに主演しようと思ったら、プロデューサーに身をささげるルールのようなものがあるということだ。もちろんプロデューサーのすべてがそうではないが、そのような悪い関係者が存在することは事実だ」とも。

 自殺したチャンさんも、こうした韓国芸能界の悪習の犠牲者だったとみられる。チャンさんの同僚らの話では、彼女はソウル市江南区内のルームサロンなどで酒の接待をしていたとされる。このことから、関係店が捜査を受けている。

 とくに韓国社会に衝撃を与えたのが、チャンさんが残した「性上納リスト」。チャンさんが接待したという10人の実名や顔写真が一時インターネット上に流れた。巷間(こうかん)に流出したリストの真偽は定かでないが、そのリストを見ると、韓国の財界関係者やマスコミ関係者の名前が多数挙がっている。

 現在、関係者への捜査が続けられているが、今回問題のキーパーソンでチャンさんに性の接待を強要したり、部屋に閉じこめて何度も殴ったり、罵倒したというプロダクションの前代表(40)は、実は7年前に「性上納」が問題になったときと同人物という。前代表は日本に滞在中で、韓国に帰国次第取り調べが行われるとみられる。

 捜査の行方が注目される一方で、7年前に問題になったときに徹底的に捜査していれば、チャンさんが自殺することはなかったという声も出ている。
(週刊韓(カラ)から、MSN)