あややまで“ブランド化”


 中国の会社や個人が、日本の地名や商品名などあらゆる固有名詞を勝手に商標登録申請していることが問題になっているが、「松浦亜弥」名の衣料品や「酒井法子」の化粧品、「浜崎歩」の文房具など、実在の人物名まで“ブランド化”しようとしていたことが分かった。何でもアリの実態を探った。

 中国商標局のサイトによると、「松浦亜弥」は2004年に香港の会社が「衣料品」ブランドとして申請。07年に登録された。名前だけでなく、鉛筆で走り書きしたようなフザけた似顔絵もロゴとなり、17年まで権利が有効となっている。


 「酒井法子」は浙江省の化粧品メーカーが中国語読みにして申請していることが判明。湖南省のメーカーも水着や衣料品で利用しようと申請している。


 このほか、「安室奈美恵」の衣類、「福原愛」の薬品、「藤原紀香」の化粧品など、人気芸能人の名前が多数申請されている。北朝鮮金正日総書記も2005年に吉林省の個人が「果酒」で申請したが、さすがにこれは商標局に却下された。


 近年、中国の商標問題は自治体担当者の悩みの種となっていた。鹿児島県かごしまPR課の担当者は「昨年1月、『鹿児島』が公告されているのを上海事務所の職員が気付き、すぐに異議を申し立てた。9件のうち『衣料』『食品加工』分野の6件が先月、却下された」と語る。だが、「確固たる理由がないと異議申し立てはできない。現在使われていない地名では異議が出せない」といい、「薩摩」の異議申し立ては見送ったという。


 地方名産の食品や酒がターゲットになるケースも多い。新潟を代表する日本酒「越乃寒梅」は北京の個人が05年に申請。すでに登録済だが、醸造元の石本酒造(新潟市)は「無法の国なので、個別に対応するより、日本酒造組合中央会を通して異議申し立てをしてもらっている」と言う。


 面倒なのは「中国商標局は職員が少なく、極端に対応が遅いこと」(商標登録に詳しい関係者)。「商標の申請から公告まで5年かかることもある。公告の3カ月間に異議を申し立てる必要があり、異議が認められるまでさらに5年かかったケースもある」。そのうえ、「公告は予告なく出るので、ネットで検索をかけ続けなければならない」(自治体担当者)という。


 中国在住のライター、山谷剛史氏は「日本の商品は高級品、と認知されている。そのため、(名前で)だましてでも儲けようという人がけっこういる。『海賊版CDはよくない』といった啓蒙活動は行われているが、著作権や商標を知る人はまだ少ない」と背景を説明する。ただ、「実際に日本人の名前を付けた商品は見たことがない」と言い、申請乱発のわりには、あまり売れていないのが現実のようだ。
nifty