多難な「解放」の道

 公立女子校での体育教育が禁じられているサウジアラビアで、8歳の女児に「どうして女の子は男の子のように体育をしちゃいけないの」と尋ねられたメッカ州知事ハレド王子(69)が女子の体育教育に理解を示す発言をしたと、23日のAP通信が伝えた。

 サウジは極めて保守的なイスラム社会で、女性には参政権がなく、車の運転は禁止。女性選手がオリンピックに参加することも許されていない。有力王族がこうした見解を示したことで、スポーツ分野でのサウジ女性の進出に道を開く可能性が指摘されている。

 アル・ハヤート紙の報道として伝えられたところによると、22日、ハレド王子は西部ジッダで文化とスポーツの振興プロジェクトを発表。その後の会合に出席した王子に女児が直接尋ね、王子は「女子校に運動場ができるといいね」と答えた。王子は教育省との調整や、女子児童・生徒のプライバシーが守られることが条件だと話したという。

 サウジ女性のスポーツをめぐっては、最近では女性がひそかにサッカーやバスケットボールのチームを結成する動きもみられる。アブドラ国王(84)の娘、アデラ王女は女性の肥満が問題になっているとして、健康上の問題からも女性のスポーツ振興に取り組むべきだとの考えを示している。

 しかし、保守派からの反対意見も根強い。先月には3人のイスラム法学者が新聞紙上で、女性のためのジムを開設するよう求めている人々を痛烈に批判。「このような動きは堕落につながる」とした。

 また、処女性を重んじるアラブ世界のためか、公然と「走ったりジャンプしたりすることは、結婚の支障になる」と述べる法学者もいる。ただし、この意見に対しては、アル・ワタン紙の女性コラムニストが「既婚女性のスポーツはどう考えるのか」と皮肉っている。(共同)


「隷属の印」サルコジ発言でブルカ論争過熱

 イスラム教徒の女性が全身を覆う衣装「ブルカ」や「ニカブ」の着用をめぐり、フランスのニコラ・サルコジ大統領(54)が規制賛成の立場を表明したため、「規制推進派」が国内で勢い付いている。ただ、着用規制は女性の人権侵害につながると反発する声も出ており、決着にはしばらく時間がかかりそうだ。

 サルコジ大統領は22日、「ブルカは宗教の印ではなく、隷属と屈従の印だ。われわれの領土(フランス)で(ブルカは)歓迎されない」と語った。ブルカの着用規制問題は、中部ローヌ県選出の国会議員が取り上げたことで、本格議論が始まった。「(地元でブルカを)着る女性が増え、顔も見られないので区別つかない」との主張に、60人近くの議員が同調、下院でも調査委員会が設置された。

 欧米の人権団体はこれに対し、着用を禁止することで女性解放を実現できるわけでもなく、結局、ブルカ着用の女性に烙印(らくいん)を押すだけだ、などと主張している。
(SANKEI EXPRESS)(MSN)