ネット副業でトラブル急増

 「簡単に収入になる」「初心者でもできる」などのうたい文句に誘われ、高額な契約をしてインターネットの副業を始めたものの、思う通りに収入につながらないトラブルが急増している。長引く不況の中、少しでも家計を助けようとした結果、赤字を拡大させては元も子もない。国民生活センターでは「仕組みについてきちんと説明を受け、慎重に契約してほしい」と呼びかけている。(道丸摩耶)

 ◆被害は全国で発生


 「普通にブログを書いたり、客からの質問にしっかり対応していれば、売り上げは間違いなく上がる」


 都内の30代の男性は、ネットで見つけた業者にこう説明され、ネット通販の一種「ドロップシッピング」を始めた。事前に「利益は月30万円ほどになる」と説明され、ウェブサイト作成費など約135万円を分割で支払ったが、ブログを始めて半年たっても注文はほとんどない。業者に集客を依頼しても「別途料金が発生する」などと相手にされず、男性は昨年12月、消費生活センターに相談した。


 国民生活センターによると、こうしたネット副業のうち、特に相談が多いのが「アフィリエイト」と「ドロップシッピング」に関するものだ。相談件数は平成17年度に計63件だったが、昨年度は379件と増え続けている。相談者の約9割が20〜40代と若いのが特徴で、100万円以上の契約をした人も17%いた。


 今年9月、札幌弁護士会と合同で特別相談「ネット副業&ネットトラブル110番」を開いた北海道立消費生活センターは「昨今の社会情勢から、内職や副業で収入を求める人が多い。セールストークにだまされ、ネットに精通していない人が契約することも多く、今後被害が拡大する可能性がある」と警戒を強めている。


 ◆提訴しても雲隠れ


 こうした業者の多くは、「収支がマイナスになることはない」「1カ月の利益は最低60万円になる」など必ず利益が出るとうたう。しかし、実際のもうけはほとんどない例も多い。


 国民生活センターによると、「絶対に利益になる」「簡単な作業をすればいい」などとうその説明をして勧誘すれば、特定商取引法違反に当たる可能性があり、クーリングオフや契約の取り消しを主張できることもある。


 消費者問題に詳しい藤森克美弁護士(静岡県弁護士会)によると、こうした手口は、「空いた時間に好きなだけ」「誰でも簡単にできる」などと誘って、教材代やサポート料金として高額な契約をさせる「内職商法」の一つだという。


 藤森弁護士は9月、「1日10〜30分の作業で毎月一定の収入が得られる」などとうその説明をして高額な契約をさせられたとする同県内の女性2人を原告として、都内のドロップシッピング業者へ損害賠償を求める訴訟を起こした。


 しかし、賠償が認められても、業者が雲隠れして支払いがされないことも多い。「簡単にもうかる」うまい話には乗らないことが肝要だ。


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【用語解説】アフィリエイトドロップシッピング


 アフィリエイトは、自分のサイト(ホームページやブログ)に提携業者の商品広告を出し、広告をクリックしたり、商品を買ったりした人数に応じて紹介料を得る。ドロップシッピングは、自分が選んだ商品を自分のサイトで販売し、商品の卸価格と販売価格の差額を得る。提携業者から客に直接商品を発送させるので、在庫を抱える必要がない。いずれの方法も、仲介業者に頼んで自分のサイトを開設するケースが多く、その際に高額な料金を取られるトラブルが多い。

産経新聞http://news.nifty.com/cs/headline/detail/sankei-m20091126006/1.htm