ヤマハの燃料電池バイク


 ヤマハ発動機が、燃料電池バイクの開発を進めている。コンセプトバイク「FC−Dii」に採用したのは、「ダイレクトメタノール燃料電池」(DMFC)だ。メタノール水溶液から水素を取り出し、酸素と化学反応させて発電した電気が動力源だ。最大出力は1キロワット。ヤマハ発の担当者は「群を抜く静粛性だけでなく、エンジン型発電機と同等の出力性能がある」と胸を張る。


メタノールが燃料

 従来の燃料電池車は、圧縮水素を利用するが、爆発の恐れがあるため、頑丈なタンクが必要だ。これに対し、メタノールは液体で発火性が低く安全性は高い。最大出力が小さいため、携帯電話用電源などとして開発が進められている。

 DMFCは、電池内部で炭素、酸素、水素が結びついたメタノール水溶液を電極触媒で分離させ、水素イオンを取り出して酸素と反応させて発電する仕組み。その際、有毒な一酸化炭素が発生するため、水と反応させて二酸化炭素(CO2)に変換し、外部へ放出する。

 ヤマハ発では、このDMFCを搭載した原動機付き二輪車の開発に取り組んでいる。


 平成15年10月の東京モーターショーには、DMFC搭載のコンセプトカー「エフシー06」を出展。16年9月には、「エフシー06プロト」が燃料電池二輪車として初めて登録ナンバーを取得し、公道での走行試験を行い、環境性能などのデータを収集した。

 さらに17年9月には「エフシー・ミー」を開発。静岡県がレンタルで採用し、その時点で、「将来のリース販売や市場導入が十分に可能」と、実用化にめどをつけた。

 エフシー・ミーのエネルギー交換効率は、50ccガソリン車の1・8倍。重量は車両全体の構成部品の見直しなどで約69キロとなり、エフシー06プロトより約6キロの軽量化に成功した。また同社が市販していた電気二輪車と同レベルの性能も達成した。


CO2排出量は半分

 19年10月にはコンセプトカー「エフシー・ディ」を東京モーターショーに出展した。発電用の燃料電池に加え、電気をためておくリチウムイオン電池も搭載。リチウム電池は取り外して充電できるようにした。


 エフシー・ディの1キロ走行当たりCO2排出量は19・4グラムで、ガソリンエンジンの原付の35・5グラムのほぼ半分だ。

 バイクへの燃料電池の搭載は、四輪車に比べて難しいとされる。搭載スペースが限られるため、小型化が必要なうえ、転倒や風雨などへの耐久性も求められる。

 ヤマハ発では、DMFCの市販化について未定としているが、多数のハードルを乗り越え、早期の普及を目指す。(鈴木正行)

(産経ニュース、http://sankei.jp.msn.com/economy/business/091129/biz0911290701001-n1.htm