協会にドロを塗っても功労金はもらえる

 ニット帽にTシャツ、Gジャンスタイル。朝青龍が黒ずくめのラフなスタイルで、ホノルルの空港に現れたという。「またそんな格好で」と、つい反射的にまゆをひそめてしまったが、引退してもう元のつく横綱。1人の民間人として、どんな格好でどこへ行こうと勝手で、常夏の島でせいぜい11年間の疲れを癒やすことだ。

 その元朝青龍に払われる特別功労金が取りざたされている。歴代3位の25回優勝で、功労金は過去最高額の貴乃花の1億3000万円を上回るのではという見方もあった。しかし、協会は10日の理事会で泥酔暴行問題について調査委員会の報告を受けて査定し、大幅減額もあるという。

 それは当然のことで退職金にあたる養老金などは約3450万円という。4日の理事会での処分は事実上の解雇だったが、自ら引退の道を選ばせたのだから、退職金はせめてもの“武士の情け”だ。その上、泥酔暴行問題での虚偽報告で、協会に赤恥をかかせた横綱に功労金など払う必要があるのだろうか。

 4日は理事会とは別に横綱審議委員会が開かれ、横審設置60年にして初めて引退勧告を決議した。理事会に報告する前に朝青龍が引退届を出したため日の目を見なかったが、協会が世論の代表でもある横審の勧告をどれほど重く受け止めているのか。もし、形式にとらわれて多額の功労金を払えば横審の存在意義すら否定することになる。

 協会にドロを塗っても功労金はもらえるという前例をつくるべきではない。世間を騒がせた責任も役員待遇から2階級降格させた師匠高砂親方一人に押しつけず、協会全体の責任として理事クラスも減給などでエリを正す姿勢を見せるべきではないのか。
(今村忠)

MSN産経ニュースhttp://sankei.jp.msn.com/sports/martialarts/100208/mrt1002082335006-n1.htm