元国税調査官によるコワい税務調査の裏話

■うっとうしい税務調査

 読者の方々は、昨年分の確定申告はもう済ませたことだろう。これは毎年2月上旬から3月上旬にかけて決まって行うものだが、税務調査となると、いつどこでどのように行われるのか、わからない。また「自分には関係ない」と思っていても、実行するのは国税局だ。

 税務調査を受けた経験のある人は慌てふためくというが、その税務調査の裏側はどうなっているのか。かつて、25年以上、大阪国税局で勤務し、特別調査班チーフなどを歴任した宮西克之税理士がこのたび、その裏側を「めったに聞けない元国税庁調査官による税務調査の裏側!」(エーキャストパートナーズ主催)と題して、東京・銀座で講演した。

 自身が税務調査を行ってきた経験から、税理士や公認会計士たちプロからアドバイスを求められるプロ。知り尽くした税務調査の裏側を明かす。

 ◆宮西税理士の話

 わたくしは以前、税務調査を行う立場だったのですが、いざ税務調査をされてみると、うっとうしいだろうなと思います。また、そう感じるように持っていくような調査をしているからというのもありますけど。

 大切なことは、情報を持っておくということです。国家権力だし、相手が何を言ってくるかわからないから怖いのであって、知っていればそうでもないと思います。

 税務調査とは3年に1回、あるいは5年に1回くらいの割合でやっていました。3年に1回調査に行って、毎回(不正をして税金がたくさん)取れるところを、国税は隠語で「お客さん」と呼んでいますけどね。ただ、今は税務職員の人員が不足しております。さらに民主党政権になってからは、公務員数を削減していくという方針なので、これからは6、7年に1回。あるいは10年に1回くらいになっていくのではないでしょうか。

 所得税法人税は何年に1回か調査が入りますが、相続税、譲渡所得はその時々です。

■税務署も費用対効果を考える

 一方で、相続税はその都度調査しています。だいたい、亡くなって一周忌が終わって落ち着いてからになるので、2年後くらいですね。

 不動産所得の調査ですが、風俗、パチンコ、病院などに比べて地味で、昔は刺身のツマ程度でした。だから、これまでは税務署もあまり調査に入りませんでしたが、今は税収が落ち込んでいるので、取れるところから取ろうとして、国の方針が転換しています。だから、今は普通にあります。昔はトッカン(正式名称は特別国税徴収官)が行って少しやる程度でしたけどね。

 では、みんなが調査を受けるのか? いえ、そうではありません。税務署も人が足りません。例えば売上1億円の会社と、売上1000万円の会社があったとして、同じ10%ごまかしていたとしても、費用対効果を考えて、金額が大きい売上1億円の方に行きます。

 申告漏れ、無申告の他に、同規模・同業種の利益率を比べます。一概には言えないのですが、例えば他と比べて異様に利益率が低いところは調べます。どこでも少しくらいはあると思いますが家事費といって私的な飲み食いや、不動産管理法人への管理費が適正かどうかということも調べます。

■タレコミは1カ月でダンボール1箱分にも

 その調査を行う基準は国税の内部にはありますが、やはり費用対効果を考えます。同じ不動産でもより大きな額を取れるところに行きます。守秘義務違反になるので、その基準はここでは申し上げられないのですが。

 税務署には月に1億6000万枚もの資料が送られてきます。その中にはかなり細かい資料もあって、○○さんの預金の利子、○○さんの保険が満期になったというようなものまであります。あとは、それ以外にも1カ月にダンボール1箱分くらいの投書が来ます。実はそのほとんどがガセネタです。恨みとか妬みで送ってくる場合が多いようですけどね。

 皆さんも、外で「儲かった」というようなことはあまり言わない方がいいかもしれません。

■節税に熱心になりすぎると損をする

 お金持ちのポートフォリオはだいたい同じようになっています。平成18、19年の相続財産構成比を見ても、わかります(ページ下の国税庁資料を参照)。土地の割合が高いのですが、土地はすぐに換金できないので、その割合を大きくしすぎると身動きが取れないようになります。だから、資産ポートフォリオもバランスが大切になってきます。

 ということは、あまり節税に力を入れ過ぎても、子孫の争いの元になります。遺産分割できれば、税率も安く済みます。逆に、遺産未分割だと税率は高くなります。子孫が仲良くすれば税率は低くなるということです。大事なことは子孫に禍根を残さないことです。

 相続財産構成比(国税庁資料より)

 ◆平成19年
土地    41.0%
有価証券  18.9%
現金・預金 22.9%
その他   17.2%

◆平成18年
土地    39.9%
有価証券  20.5%
現金・預金 22.4%
その他   17.2%

niftyニュース、http://news.nifty.com/cs/economy/economyalldetail/yucasee-20100227-2716/1.htm