「デスパレートな妻たち」


 米人気テレビドラマ「デスパレートな妻たち」の出演女優がプロデューサーを相手取り巨額の賠償請求訴訟を起こし、全米で物議を醸している。訴状によると女優はプロデューサーに殴られたり暴言を吐かれたりしたうえ、番組を突然降板させられた。しかし他の女優らが連名で「事実ではない」と反論。プロデューサーの全面擁護を表明するなど、番組の外でも相変わらずゴシップ紙に話題を提供している。

(黒川信雄)

 訴えを起こしたのは、色気たっぷりの不動産業者の役で人気を集めたイーディ・ブリット役のニコレットシェリダンさん。訴えられたのは、番組の脚本家で、“温厚な人柄”で知られるプロデューサーのマーク・チェリー氏だ。

 AP通信によると、シェリダンさん側は4月5日にロサンゼルスの裁判所で訴えを起こした。訴状には、チェリー氏が撮影中に出演者やカメラマンなどのスタッフに対し「極めてぞんざいな態度をとり続けた」との内容が詳細に記録され、さらに出演者にあからさまに怒りをぶつけることも少なくなく、特にその怒りは「シェリダンさんに向けられることが多かった」との主張が展開されている。そして2008年9月、シェリダンさんが脚本について質問をした際、チェリー氏は彼女を舞台の脇に連れだし顔や頭を殴打したと指摘した。

 チェリー氏はすぐにシェリダンさんに謝ったが、その後も同様の状況が続いたという。シェリダンさんは番組を放映するABCにも訴えたが状況は改善せず、まもなく彼女は番組を降板させられた。

 訴状でシェリダンさん側は、「裁判を起こしたくはなかったが、やむを得ない措置だった」とし、降板に伴う苦痛などに対する損害賠償として、チェリー氏側に2000万ドル(約18億2千万円)もの巨額の賠償金を請求した。

 ところが、シェリダンさんの訴えに真っ向から「事実ではない」と声を上げたのは同僚の女優らだった。彼女らが連名で発表した声明には、番組の撮影現場でシェリダンさんが訴えたような状況は全くなく「チェリー氏がスタッフや出演者らに対し行ったサポートは、素晴らしい職場環境を作っていた」「一般の人々に(シェリダンさんが訴えたようなことを)信じさせてしまうのは無責任と思った」などとしており、シェリダンさんの主張を全面否定している。さらにABCも、シェリダンさんは昨年にも同様の訴えを行っているが、内容については争う必要があるほどのものではなかった」との声明を発表した。

 米紙ロサンゼルス・タイムズによると、シェリダン側に追い打ちをかけるように、出演者の一人で、ガブリエル・ソリス役のエヴァ・ロンゴリア・パーカーさんがラジオ番組で「殴ったのは、そういう演技が必要でその手本を見せただけ。それを悪く感じたのかしら」と発言。シェリダンさんの“暴走”を示唆した。

 どちらの主張が正しいかは不明で、裁判の行方はまだ見えてこない。

 シリーズ化しているドラマの「シーズン4」の中で、シェリダンさん演じるブリットは、パーカーさんら同僚の女優らが演じる「妻たち」の怒りを買い、断絶宣言をされてドラマの舞台となっている「ウィステリア通り」を去ることを余儀なくされる。現在、日本のNHK・BS2で放映中の「シーズン5」では、再び町に戻ってきたとの設定だが、美女たちが現実の世界でも繰り広げる「場外乱闘」に、ドラマのファンらにとっては気が気でない日々が続きそうだ。

MSN産経ニュースhttp://sankei.jp.msn.com/world/america/100429/amr1004290702001-n1.htm