奇跡の理由は


 リビアトリポリ国際空港で12日に起きた航空機の墜落事故では、乗員・乗客103人が命を落とす一方、オランダの10歳の少年の生存が確認された。過去に発生した墜落事故を見ると、乗客多数が犠牲となる中、子供が唯一、助かるケースが見受けられる。なぜなのか。

 「その理由は、子供の体の大きさと関係があるはずだ」。米国の航空安全財団のウィリアム・ボス代表はAP通信に対し、座席で身動きがとれない大人とは違って子供は体が小さいために、「衝撃の瞬間、体を比較的容易に守れる」との見方を示す。体重が軽く、体が柔軟なことも、理由として挙げられそうだ。

 過去の例をみると、アフリカ東沖コモロ諸島近くで2009年6月に起きた墜落事故(152人死亡)では、12歳の少女が奇跡的に助かった。この少女は海中で飛行機の残骸(ざんがい)にしがみつき、生き延びるという強靭さまで見せつけた。

 スーダンで03年7月に起きた墜落事故(116人死亡)でも、3歳の男児が奇跡的に生還した。1995年1月に南米コロンビアで起きた墜落事故(51人死亡)では、事故後、群生する水ユリの上に9歳の少女が体を横たえているのが見つかった。

 このほか、米デトロイトでの事故(87年夏、154人死亡)でも、消防士が現場に駆けつけた際、シートベルトをした4歳の少女が座席で生きているのが見つかり、大ニュースとなった。

 ただ、こうしたケースは極めて例外的で、子供の生存率も低いことには変わりない。

 航空安全専門家で元パイロットのジョン・ナンス氏は「子供がシートベルトをしていなければ(機内で)『ミサイル』と化す」と警告する。墜落の際、子供たちが四方に投げ出されて即死するだけでなく、他の搭乗客にとっても危険ということだ。

 今回の墜落事故で、少年が奇跡的に助かったことを受けて、飛行機の出発地点である南アフリカの聖職者、タボ・マクゴバさんは「『死』という黒々とした雲の中に、希望の光を見いだした」と感慨深げに語る。

 両脚の複雑骨折という瀕(ひん)死(し)の重傷を負いながらも生還したこの少年は、ベッドの上で医者に出身地を聞かれた際、「オランダ、オランダ」と声を振り絞り、生への執念を見せつけたという。

 リビアムハンマド・ザイダン運輸相は12日、悲惨な事故を繰り返さないようフライトレコーダーを解析し、原因解明に全力を挙げる、と強調した。

MSN産経ニュースhttp://sankei.jp.msn.com/world/mideast/100514/mds1005140615000-n1.htm