かけっこ、速く走るには 

「まっすぐ走る方向を見て」

 いよいよ運動会のシーズン。「今年こそ、かけっこで1等賞、とまでは言わないけれど、少しでも順位を上げたい」と願う子供も多いはず。今からでも間に合う速く走れる方法はないか。切羽詰まったお願いを、北京オリンピック銅メダリストで陸上教室「NOBY T&F CLUB」を主宰する朝原宣治(のぶはる)さん(38)=大阪ガス=にぶつけてみた。(岸本佳子)

 ◆スタートは冷静に

 兵庫県西宮市の大阪ガス今津総合グラウンド。「すぐに速くなるコツを」と教えを請うと、朝原さんは「うーん」と苦笑い。そして、最初に飛び出したアドバイスは「スタートでパニックにならないこと」と意外な内容だった。

 「横一列に並んでしまうと、つい焦ってしまう。いきなり、がむしゃらに走り始めるのではなく、地面を踏みしめるようにスタートしてみましょう」。確かに号砲が鳴ると、頭に血が上る。でもそこは冷静に。そして、だんだんとスピードアップだ。

 速く走るには「腕を速く大きく振る」「足を高く上げる」のが一番、と考える人もいる。しかし、朝原さんは「手足はあんまり意識しないほうがいいんです」。ただ、走る姿勢には気をつける。「よそ見をしたり、ぐにゃぐにゃと走ってしまう人もいますが、真っすぐ前を、進む方向を見て走ってください」。お母さんの声援が聞こえても、ぐっと我慢だ。

 リラックスも大切。肩に力が入ったり、手をグーに握りしめたまま走ったりすると、スピードが出ないからだ。コーナーが苦手な人はこの際、ちょっとスピードを落としてみよう。「重心も少し落とし、ちっちゃくなってみると走りやすいですよ」

 ◆走る姿をチェック

 ところで、自分の走る姿は意外と知らないもの。そこで、携帯電話のビデオ機能などを使って、一度、走る姿をチェックするのもいい。矯正はできないかもしれないが、「自分はこういう姿で走っている、と気がつくだけでもいいと思います」。イメージトレーニングも有効だ。「走りたくないなあ」と頭を抱えるより、1着でゴールするイメージを持ってみよう。

 実は、「速く走る一番のポイントは外で楽しく遊ぶことにある」と朝原さんは言う。かけっこでも、自転車でも、ボール遊びでも、さまざまな外遊びの中にバランスの取り方や身のこなし方など、速く走るための要素が詰まっている。「クーラーの効いた部屋で遊ぶより、運動会までの2、3週間でも外で元気に遊ぶのもいいかもしれませんね」

 最後に、運動会で走るお父さんたちに朝原さんからアドバイス。「ぶっつけ本番はまずい。運動会までの時間、歩くことでもいい。体を動かし、準備してから出場してください」

(MSN産経ニュース、http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/100908/sty1009080801001-n1.htm