最悪のシナリオ

2008年10月5日(日)10時0分配信 日刊ゲンダイ

 生保や銀行といった金融機関が再び経営不安に陥るのではないか。

 株の大暴落でとうとうこんな声が上がり始めた。たしかに、三菱UFJ、みずほ、三井住友など主要6銀行グループの株式含み益は、08年9月期末で合計約2.8兆円と3月期末より27%も減った。債券の含み損も拡大し、いいところなしだ。

 だが、これはイントロでしかない。

金融庁日経平均株価8000円を想定したシミュレーションを作っている」

 こんな情報が市場に漏れ伝わってきているからショッキングだ。

 金融事情に詳しいジャーナリストの小林佳樹氏が言う。

「このシミュレーションは、決算期を迎えた3月にできたものとされていて、8000円まで暴落した場合、金融危機の火種になりそうな銀行がどこかを把握するために行ったフシがあります。1万2000円を割った現在、シミュレーションの結果と金融庁の思惑にガ然、関心が集まっているのです」

 本当に日経平均が8000円になれば、メガバンクであっても無傷ではすまない。「貸し渋り貸しはがしをする一方で、メガバンクの融資は焦げ付いて日を追うごとに不良債権化している」(銀行関係者)のが現実だからだ。すでに地銀の負担増は深刻で、08年4―6月期の与信コストが前年同期比で80%も増えている。株価が暴落を続ければ、経営が悪化する融資先は急増し、貸倒引当金の負担が重くのしかかるのは明らかだ。

 生保もかつて来た道をたどる恐れがある。9月末時点で日本生命など大手7社の有価証券の含み益が28%も減少し、朝日生命や三井生命は含み損を抱えてしまった。各生保の株式保有比率は以前の生保危機より低いものの、1万円割れを平気でやり過ごすことはできない。

「ハイリスク・ハイリターンの外貨建て金融商品を多く持つ生保もあり、保有する有価証券の含み益がどこまで毀損(きそん)するか予測がつきません」(前出の銀行関係者)

 金融庁のシナリオは果たして現実のものとなるか――。

日刊ゲンダイ2008年10月2日掲載)
niftyニュースより)