手紙

 卒業シーズンを迎え、シンガー・ソングライターアンジェラ・アキさん(31)のヒット曲「手紙〜拝啓十五の君へ〜」が、新たな卒業ソングとして中学生らの人気を集めている。15歳の自分と大人になった自分との間で交わされる手紙形式の歌詞。アンジェラさんの実体験に基づく率直な言葉が、「自分の気持ちと重なる」と多感な思春期を生きる中学生たちの共感を呼んでいるようだ。

 「手紙」は昨年9月の発売以降、3月1週まで22週連続でオリコンのトップ50に入るロングセールスを記録。この間、多くの中学校の文化祭などでも歌われてきた。全国の中学校教諭を対象にした卒業式の人気曲ベスト10(音楽之友社調べ)でも、「仰げば尊し」などの定番ソングに交じって3位にランクインしている。

 もともと合唱コンクールの課題曲として作られた「手紙」は、10代のアンジェラさんが未来の自分にあてて書いた実際の手紙がベース。アンジェラさんは、30歳の誕生日に母親から送られてきたその手紙を読んで、「あのころの痛みや苦しさを思いだし、10代の自分に返事が書きたくなって」ピアノに向かったという。

 「時を越えて、自分と自分がつながり、励まし合うという瞬間をつくりたかった」とアンジェラさん。その思いは、世代を超えて確実に伝わっている。

 奈良県明日香村の村立聖徳中学校では、17日に行われる卒業式で3年生計53人が「手紙」を合唱する。同校では昨秋の文化祭でも同曲を歌い、生徒たちの強い希望をもとに卒業式でも歌うことになった。


 練習で混声3部の息のあった歌声を響かせている3年生に共通する思いは「歌詞が自分自身の生活にあてはまり、15歳だからこそ気持ちを込めながら歌える」ことだという。

 「ソフトテニスの県大会で負けてしまって、近畿大会出場という夢を達成できなかったことを思い出すんです」と榊本健太さん(15)。中島望さん(15)は「友達とけんかして、相手を信じられなくなったときに『手紙』の歌詞を思いだしました」。

 友人関係、恋愛、受験…。さまざまな悩みや不安を抱えた多感な時期。アンジェラさんは曲について「かつての私と同じような悩みを感じている中学生たちに、あなた一人が苦しいわけではないんだよと伝えたくて。大人の自分から子供の自分へ、上からではなく同じ目線で書くことを心がけたのが、共感を得た理由でしょうか」と話し、「これからも、将来や友達、大人との関係など、不安や悩みはたくさん出てくると思います。だけど絶対に大丈夫。自分を信じてください」とエールを送っている。
(MSN)