最新薄型テレビにみる“節電”のテクニック

 今回は“エコ意識”の高まりをうけて各社が新しく実装した節電機能を見ていきたい。メーカーごとにアプローチはさまざまだが、春の新製品に多く見られるのは“もったいない”状況を自動的に回避しつつ、使い勝手や画質といった別の部分でも役に立つものが多い。自分のライフスタイルに合ったテレビを選ぶことで、従来以上に電気代の節約とプラスアルファの満足を提供してくれるはずだ。

●意外とベーシックなシャープ、見る人によって画質を調整する三菱

 まず、前回32V型などいくつかの製品が“省エネトップランナー”と紹介したシャープだが、意外にも付加的な節電機能はあまり搭載していない。テレビ放送が終了したときや一定時間操作がなかった場合に自動的に電源をオフにする「無信号電源オフ」「無操作電源オフ」、そして「明るさセンサー」によるバックライトの輝度調節など、他社製品も標準的に備えている機能が中心だ。

 「映像オフ」機能は、チューナーなどの電源は入れたまま、液晶画面だけをオフにして、番組音声や音楽を楽しむという、いわゆる消画モード。例えば主婦の場合、洗い物や掃除など家事をしながら、テレビの音に耳を傾けていることも多いはず。そんなとき、もっとも電力を消費する液晶画面を消し、音だけにすればいい。

 4月17日に新製品をリリースした三菱電機も「無信号電源オフ」「無操作時電源オフ」「消画モード」「電力量節約モード」「明るさセンサー」など、ベーシックな節電機能は共通だ。面白いのは、テレビの消し忘れを防ぐために明るさセンサーと連携して電源をオフにする機能。あらかじめ設定しておくと、照明を落とした約6秒後にテレビの電源が切れるため、この時間差を利用して照明のスイッチを切ってから部屋を出るまで、あるいはベッドに潜り込むまで、テレビが照明代わりになってくれる。

 新機能は、ユーザーの年齢や部屋の明るさに合わせて画質をコントロールする「ECO画質モード」。子ども用の「ジュニア」やお年寄り向けの「シニア」が用意されており、例えばアニメやテレビゲームなど明るい画面を見ることが多い子どもたちの場合、明るさを全体的に抑えて目に優しい画質に調節する。今までの製品にも同様の機能を持つ「家庭画質モード」が搭載されていたが、春の新製品からは「明るさセンサー」と連動して、より柔軟に画質を変更するようになっている。また、省エネ効果を画面上で確認できる「ECOメーター」「ECOモニター」も新しい(写真参照)。

ソニーの新提案は自動消画

 ソニーBRAVIA”も「明るさセンサー」や「無操作電源オフ」といった省エネ機能は標準的に搭載している。さらに、春の新製品「V5シリーズ」では「人感センサー」と「省エネスイッチ」という新しい機能を加えた。

 人感センサーについてはテレビCMで知った人も多いかもしれない。画面の下に備えた丸いセンサーでユーザーの“動き”による温度変化を検知し、テレビの前から人がいなくなったと判断した場合は、まず消画モードに移行して音だけを流す。このときの電力消費は通常の約半分だ。すぐに人が戻ってくると、自動的に画面をオン。前述の通り、いわゆる「消画モード」はシャープや三菱電機の製品も備えているが、こちらは自動化した消画モードといってもいいかもしれない。消画するまでの時間は、5分、30分、60分から選択できる。

 また人感センサーでは、席を外したまま(消画モードで)30分が経過すると、今度はスタンバイ状態に移行する(電源をオフ)。急な来客や電話で席を外し、そのまま話し込んでしまったり、テレビを見ながらソファで寝てしまったりといったことは誰にでも経験があるはず。戻ってきてから「しまった、テレビつけっぱなしだった」という失敗をテレビがフォローしてくれる。

 一方の省エネスイッチは、電源コードを抜かなくても消費電力を「ほぼ0ワット」にするというもの。テレビの場合、主電源を切ったとしても、コンセントにさした状態ではおよそ0.06ワットの電力を消費している。しかし、本体の側面に設けられたスイッチを切ると、それが0.0001ワット未満(=ほぼ0ワット)になるという。スイッチを切った状態ではリモコン操作も受け付けないため、利用シーンは限定されるが、家を空ける時間が長い人、あるいは節電のために寝る前に主電源を切る習慣のある家庭などには有用だろう。

 このほか、V5シリーズにはPCを接続した際に映像信号を30秒以上検出しないと電源をスタンバイ状態にする「PCパワーマネジメント」、テレビ視聴中に標準モードと比較してどれだけ節電できているかの目安を表示する「消費電力レベルバー」といった機能も搭載されている。

VIERAリンクで「こまめにオフ」

 節電のために、HDMIリンク機能を積極的に活用しているのがパナソニックだ。HDMIケーブルを介してテレビやレコーダー、ラックシアターなどが連携動作する「VIERAリンク」を用い、電源の状態をきめ細かく制御する。システムトータルの節電を目指した機能といえそうだ。

 例えばBDソフトを見た後で、リアルタイムのデジタル放送に切り替えたとき。映像を映すのはVIERAなので、テレビ内蔵のチューナーを使えばDIGAが動いている必要はない。このためVIERAリンクで接続していると、DIGAは自動的にスタンバイ状態に移行する(こまめにオフ)。またVIERAリンクのメニューから「音声をテレビから出す」を選択すると、ラックシアターの電源は自動的にオフになる。これも春の新製品から実装されたものだ(他社のリンク機能には以前から搭載しているものがあった)。

 現在のDIGAシリーズには、電源オンとオフのほかに“クイックスタートオンのスタンバイ状態”を含めた3つの状態があり、VIERA側の動作状況によって使い分けている。例えばシステム全体がオフの状態からテレビの電源を入れると、DIGAは“半分起きて”(クイックスタートオンのスタンバイ状態)待っているため、電源が入れられたときにあまり時間をかけずに録画番組一覧などを表示できる。

 逆にVIERAがオフになると、DIGAも熟睡(電源オフ)して、フロントパネルの時計表示まで消える仕組み。「クイックスタート」自体は以前のモデルから搭載していたが、半分起きた状態(待機時)は電源オフ時に比べて待機消費電力がかなり増える点がネックだった。VIERAリンクを活用して、その時間を最低限にとどめたというわけだ。

東芝、日立は視聴環境画質対応

 VIERAの場合は、節電しながらAVシステムの操作性を高める事例といえそうだが、東芝日立製作所の新製品が搭載している“自動画質調整”は、操作性と節電、そして画質の3つを一気に満足させようとする欲張りな機能だ。パイオニアが「リビングモード」という名称で先鞭をつけ、現在では東芝の「おまかせドンピシャ高画質」と日立製作所の「インテリジェント・オート高画質」が双へきといえる。

 冒頭で触れたように、周囲の明るさを感知して画面の明るさを変える“明るさセンサー”は多くの製品が採用している、いわば定番の節電機能。それを発展させ、周囲の明るさに加えて、照明の色(蛍光灯色、電球色)、視聴している番組のジャンルなどを参照して、画質をきめ細かく調整する。

 例えば部屋の中が暗くなったとき、単純に画面を暗くするだけでは暗部階調性が損なわれて見にくい画面になってしまう。それを回避するには、色温度やガンマ、シャープネスなど画質の調整項目をきめ細かくコントロールする必要があるのだが、毎日、暗くなるたびに画質調整画面をいじる人などいないはず。わずらわしい設定をテレビに任せてしまっても、画質が改善されて同時に節電にもなる自動画質調整は、メリットが大きく、デメリットがほとんどない機能だ。

 既に2世代めとなる東芝の自動画質調整は、名称が「おまかせドンピシャ高画質・プロ」(Zシリーズに搭載)となり、新たに人間の視覚反応の1つである「明暗順応」に合わせた補正がくわえられた。人は、いきなり暗い場所に入ると目が順応するまでに150〜180秒かかるが(暗順応)、照明をつけたときや明るい場所に出たときは20〜30秒で順応できる(明順応)。この時間差に着目して周囲の環境(明るさ)が変化した際に画質を切り替える時間を調整するという、非常に芸が細かい画質調整機能だ。

 省エネテレビを購入する際、知識のある人なら、カタログで「消費電力」や「年間消費電力量」をチェックすることだろう。ただし、これらの数値は一定の条件で計測したものであり、今回取り上げたような付加機能による“実運用時の節電”はまったく加味されていない。例えば「年間消費電力量」は、テレビをスタンダードモードで1年間平均的な使い方をしたときの電力消費量であり、明るさセンサーや自動画質調整機能が画面の明るさを落とすことは想定されておらず、数字にも節電機能の効果は現れない。

 つまり、これらの機能をうまくライフスタイルに取り込むことで、テレビはカタログスペック以上の節電効果を上げてくれるはず。自分のライフスタイルに合った機能を持つテレビを選択することが、節約とエコロジーの近道といえるだろう。
(+D LifeStyle、YAHOO!JAPAN)