15歳未満認める「A案」衆院で可決

 臓器移植法改正案は18日午後、衆院本会議で採決され、脳死を「人の死」とすることを前提に、現行では禁止されている15歳未満からの臓器提供を可能とすることを柱としたA案が賛成多数で可決された。

 審議の舞台は参院に移るが、A案の成立に消極的な意見や慎重審議を求める声が出ており、成立までには曲折も予想される。

 採決は記名投票で行われ、投票結果は賛成263、反対167だった。投票総数は430だった。共産党は時期尚早との理由で採決を棄権し、そのほかの政党は個人の死生観や倫理観に基づく問題であるとして、党議拘束をかけず議員個人の判断に委ねた。

 A案は脳死が「人の死」であることを前提として、臓器提供の条件について、書面による生前の意思表示と家族の同意を必要としている現行制度を大幅に緩和した。本人意思が不明でも生前の拒否がない限り家族の同意で臓器提供できるよう改める。現行では臓器提供の意思表示ができる年齢を15歳以上としているが、本人意思が不明でも臓器提供が可能になることで年齢制限は撤廃され、乳幼児からの臓器提供が可能となる。また親族への臓器の優先提供についても本人の意思表示ができると定めている。

 国会に提出された四つの改正案のうち、最も臓器移植の機会を拡大する可能性があり、患者団体や日本移植学会などが支持していた。

 残る3案は、臓器提供可能年齢を現在の「15歳以上」から「12歳以上」に引き下げるB案、脳死の定義を厳格化するC案、15歳未満について家族の同意と第三者による審査を条件に可能とするD案だったが、最初に採決されたA案が過半数の支持を得たため、採決されないまま廃案となった。

 A案は同日中に参院に送付され、参院厚生労働委員会で審議が行われる見通しだ。参院の民主、社民両党の有志議員はC案の考えに近い新案を参院に提出する構えを見せており、西岡武夫参院議院運営委員長は「参院でまだ何の議論もしていない。この問題は慎重にあらゆるケースを考えないと禍根を残す」として、一定期間の審議が必要との認識を示している。

 現行の臓器移植法は1997年6月に成立した。施行後3年の見直し規定があり、臓器提供条件の緩和や15歳未満の臓器提供を認めるよう、患者団体や日本移植学会が法改正を求めてきた。2006年にA、B両案が与党の有志議員によって国会に提出された。C案は両案の対案として、野党の有志議員によって07年に提出されたが、長らくたなざらしの状態が続いていた。

 昨年5月、国際移植学会が自国外での臓器移植自粛を求めた「イスタンブール宣言」を採択し、世界保健機関(WHO)も臓器移植の自国内完結を促す指針を取りまとめる方向となった。このため、15歳未満の臓器提供が禁止されている日本の小児患者は臓器移植を受ける道が閉ざされる可能性が出てきたことから、にわかに同法の改正論議が活発化した。
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