薬物使用の危険性

 私達には「新しい事をしたい」「スリルを感じたい」という気質が多かれ少なかれありますが、世の中には面白半分に手を出してしまっては決していけないモノがあります。

 法律で禁止されている薬物はその最たるモノだと思います。薬物使用は、刑事上の罰を受けるばかりでなく、その人の社会的機能を低下させ精神医学的にも重大な障害をもたらし得ます。

 今回は、法律で禁止されている薬物の中で世界的に最も使用されている大麻を取り上げ、大麻のもたらす問題の深刻さをお話したいと思います。

大麻の生理的作用

 大麻中央アジア原生のアサ科に属する一年生の植物です。大麻の煙を吸う事によって、多幸感、幻覚などの中枢神経作用が現れる事は数千年前から知られていて、古代ローマの歴史家ヘロドトス黒海地方の遊牧民族であるスキタイ人大麻使用について記述しています。

 大麻の作用は、大麻に含まれているTHC(テトラ-ハイドロ-カノビノール)と呼ばれる物質によります。THCの(作用を発揮する為に結合する場所である)受容体は脳内の海馬、基底核、小脳などに分布しています。大麻は煙として肺から体内に吸収されると、多幸感が数分以内に現れ、約30分でピークに達します。多幸感の他に、体内に吸収されたTHCの量に応じて、以下のような症状が現れます。

・結膜の充血
・心拍数増加
・食欲の昂進
・口の渇き
・現実感が薄れる
・魂が体から離れるような離人体験
・記憶障害
・協調運動能力の低下
・反射神経が鈍くなる

 また、THCは知覚にも影響を与えます。周りの色彩がより鮮やかに見えたり、時間がゆっくり流れるように知覚されます。

大麻使用が引き起こす問題

 大麻のみならず、一般に、脳に作用する物質には依存性があります。依存には、その物質の使用を中止すると強い不安が出現する精神依存と、使用中止後、不快な離脱症状が生じる身体依存の2つがあります。大麻使用による依存は精神依存が主です。大麻の身体依存は、はっきりしたものではないですが、以前と同じ効果を得る為には、以前より多くの量が必要になる、耐性は生じます。依存の他に、大麻使用により出現する可能性のある、精神医学的な問題には以下のようなものがあります。

・強い不安やパニック発作
・不合理な恐怖
・そう状態
・幻覚
・妄想
・フラッシュバック(大麻使用時の感覚や知覚が大麻の非使用時に突然、意識に入ってくる現象)
・意欲、興味の低下
統合失調症の発症

 大麻使用に関連する医学的な問題として、免疫機能の低下、煙に含まれる発ガン性物質による肺ガンのリスクなどがあり、また、大麻使用は覚せい剤など他の薬物の使用につながりやすい事も大きな問題です。

 大麻使用は外国によってはそれほど厳しくない国もあるようですが、以上のように大麻はさまざまな問題を引き起こすので、やはり、絶対に手をだしてはいけないものです。君子危うきに近寄らずです。

メンタルヘルス:中嶋泰憲】
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