【こども】夜更かし なぜ悪い?

 深夜の繁華街や飲食店、コンビニエンスストアなどで親に連れられた小さな子供を見かけることがある。そんなに遅くまで起きていて大丈夫なのか−。こうした現状に、専門家は「夜更かしさせる今の社会は子供たちに危害を与えている」と警鐘を鳴らす。(草下健夫)

 ◆生体時計に影響

 「特に日曜日に親と夜更かしし、寝坊して朝食抜きで登校する。そのため授業に集中できず眠そう」「4年生くらいから放課後の習い事で寝不足になっている」。都内の私立小学校の養護教諭たちは、こんな状況を危惧(きぐ)する。

 子供の睡眠に詳しい、東京ベイ・浦安市川医療センターの神山(こうやま)潤センター長(小児神経科医)は「日本の子供の寝不足は国際的に見ても際立っている」と懸念する。

 神山センター長は「夜型の生活が悪いというデータは多く出ているが、その理由はまだ十分解明されていない」と説明。そのうえで、まず人間の体のリズムをつかさどる「生体時計」への影響を指摘する。

 生体時計の1日は、地球の「1日=24時間」より少し長いことが知られている。朝起きて光を浴びることで、無意識のうちに“時差ぼけ”をリセットしている。逆に、夜の光(夜更かし)は生体時計と地球時刻のズレを拡大し、睡眠や覚醒(かくせい)、体温、ホルモンなど体内のさまざまなリズムを乱してしまうと、神山センター長はみる。

 また、朝の光を浴びることで、心を穏やかにする神経伝達物質セロトニン」の働きが高まる。セロトニンの働きが弱いと、気分がめいったり、攻撃的になったりするとされる。眠気をもたらすホルモン「メラトニン」は子供のうちに多く分泌されるが、明るい(夜更かしする)と分泌は抑制されるという。

 ◆まず大人が行動

 ただ、神山センター長は「何歳で何時間寝るべきだという一律の答えはない」と話す。「どんな睡眠なら午前中に元気に過ごせるかを試すなどして、適切な睡眠時間を見極めてほしい」

 朝の光を受け、昼間に心身を活動させ、規則的に適切な食事をし、夜間にきちんと眠る。この4点を生活の鍵とすべきだという。

 「日本の子供たちは発育期に睡眠がおろそかになるとどうなるかという、大規模な実験にかり出されている。その結果が出たときには取り返しがつかない。そんな危害を今、社会が子供たちに与えている」

 神山センター長は「まずは大人が睡眠を大事にしないと、子供がきちんと眠るはずがない。頭で理解するだけでなく、大人が行動を変えてほしい」とアピールする。



テレビの影響も

 厚生労働省が昨年11月にまとめた「第7回21世紀出生児縦断調査」によると、7歳児(平成20年の年齢)の就寝時刻は登校日の場合、午後9時前が25%、9時台が62・8%、10時台が10・8%、11時以降0・6%などだった。土曜日は順に12・2%、52・5%、28・6%、4・4%。

 また、登校日のテレビ視聴時間別では、テレビを見ない7歳児の46・4%が9時前に寝ている。視聴時間の長さとともに夜更かしになり、3時間以上見る子供では9時前の就寝は11・3%にとどまり、10時台が23・6%にも上った。

MSN産経ニュースhttp://sankei.jp.msn.com/life/education/100217/edc1002170706001-n1.htm