消費者庁vsアップル社

 少し前に、観光庁の話をここでした。もう少しがんばってほしいとは思うが、その存在意義は誰でもわかる。日本はいいところだし、観光客がもうちょっと増えてもいい。それなりに重要な機能は果たせる役所だろうとは思う。現在でも中国人観光客の誘致には少し力を入れているらしい。ぼくの行くような途上国ではあまり目立たなくても、手近なところから攻めるという考え方はありかな、とは思う。

 だが、もう一つ新設で、やはり影の薄いお役所がある。消費者庁だ。

 これはよくわからないお役所だ。消費者が被害に遭うトラブルが多いから消費者を守る、という理屈そのものはわからなくもない一方で、消費者庁ができる一つのきっかけは、あのこんにゃくゼリーをめぐるまったく意味のない騒動だ。

 その他パロマガス湯沸かし器問題とか、中国冷凍餃子問題とか、たしかに問題ではあったが、新しい一大官僚組織をつくることでそれが改善されるのか、というのは疑問だ。

 トラブル対応でしくじったら、たいがいはその企業自体が自分の首を絞める。だから普通は自分で火消しをする。そこに行政が口を挟む理由というのは、本来はあまりない。

 そして口を挟むなら、理由をきちんと説明しなくてはならない。人命に関わる、全財産むしられる、競争がなくて自浄作用が効かないなど、根拠が必要だ。

 さてその消費者庁、2月17日にアップル社の音楽ネット販売サイト、iTunesストアに対して消費者庁が質問状を送りつけ、iTunes側が3月2日に(かなりそっけない)回答をしたら、その2日後に、さらに山のような追加質問を出しているのだ。そして、3月12日までに答えろという要求までしている。

 質問は、なんでも不正請求の苦情が増えているようだが、現状と原因と対応を説明しろ、というもの。それに対してiTunesは、べつに増えていないし、データは公開できないし、クレジットカードの不正請求なんて他にいくらでもあるから知らん、対応は利用規約だし苦情があれば返金などもしている、と回答。要するに、やることやってるから余計な口を挟むな、というわけだ。

 お役所にここまで公然と盾突けるとは、さすがアップル社をバックにしたiTunesだ。アップル社は信者も多い一方でアンチも多い。ネットでは消費者庁もっとやれ、という声から、引っ込めという声までさまざまだ。

niftyニュース、http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/voice-20100424-01/2.htm