携帯いじるKYな場内警備

 「角界の常識は世間の非常識」。大相撲の世界で不祥事が発覚するたびに、こんな声がわき上がっていた。今回もまったく同じだ。

 「見に来たい人が(場所に)来てくれれば」。NHKが大相撲中継の中止を決めた際、名古屋場所担当部長の二所ノ関親方(元関脇金剛)はこう述べた。さらに翌日には、千秋楽での賜杯の表彰自粛などを決めたことについて「初めて優勝する力士になったらかわいそう」と発言。スポーツ紙などで「連日のKY発言」と報じられた。

 筆者は今回、名古屋場所の初日に愛知県体育館を訪れた。初めての大相撲取材だったが、「KY」を感じることが少なくなかった。

 例えば広報対応。事務所を訪れると「訪問者は会社名と氏名を名乗るように」と書かれていたため、その通りにしたが、多くの職員がいるのに室内の反応はなし。たまたま事務所に戻ってきた男性職員に要件を告げると、「はあ」と生返事だったり、「細かいことはわからない」などと面倒くさそうな態度がありありと見えた。

 会場内では、緊張感のかけらも感じられなかった。

 関係者入り口付近で、元力士と思われる関係者が談笑していた。観客から見えないとはいえ、すぐそばには出番を待つ力士がいるにもかかわらずだ。常に携帯電話をいじってばかりの場内警備の元力士もいた。

 大相撲を取材した経験がある同僚記者は「角界プロ野球など他のスポーツに比べて、ものすごく閉鎖的な世界。結局、力士だけで構成され、長年の人気の上にあぐらをかいて殿様商売を続けてきた結果だろう」と話す。

 46歳の女性は「見られていることの自覚」と題したメールを送ってくれた。

 《スイミングスクールのコーチをしていたとき、『プールに入ってなくても、プライベートで何かしていたときに、親や子供さんが見ているんだよ』と厳しく指導されました。角界でもこういうことは自覚していると思ってましたが、実際は『わからなければいいだろう』だったのかもしれませんね。自分たちの社会的影響力をわかってなかったような気がします》

(祥)

MSN産経ニュースhttp://sankei.jp.msn.com/sports/martialarts/100715/mrt1007151131000-n1.htm