日本は「ヘンな国」!?

 フランス国内で日本の評判が最近、芳しくない。例えば、高齢者の所在不明問題。「(神戸市内の)公的記録では100歳以上が847人」(ルモンド)、「100歳以上が数百人行方不明」(フィガロ)といった具合に仏紙で派手に報じられている。

 身分証明書や滞在許可証など「パピエ(証明書)」類がない限り、就職もアパートを借りることも法的に不可能なフランスでは信じられない事件だからだ。

 むろん、信じ難い事件は仏国内でも起きる。仏北部の女性が実弟の葬儀の日、同じ敷地にある共同墓地内に、近くの町で1人暮らしをしているはずの息子の墓碑銘を発見した、という報道があった。女性が叔父の葬儀に出席するよう息子の留守番電話やアパートに伝言を残していたのに、息子は欠席していた。道理である。

 息子は約1カ月前に死亡し、死後3日後に近所の住民に発見された。遺体は警察の検視の結果、「自然死」と判明。共同墓地に埋葬されたというわけだ。

 女性はなぜ、近親者を捜して訃報(ふほう)を伝えてくれなかったのかと嘆き、警察を訴えると憤る。だが、「パピエ」のおかげで無縁仏にもならず、生年月日や死亡日入りの墓碑銘も刻まれた点で、「生ける屍(しかばね)」や年金詐欺の対象になるよりもはるかに人間的な事件だ。

 日本を「ヘンな国」視した報道はほかにもある。

 最新号の仏週刊誌ルポワンは「若者とウツ」の見出しで、30歳過ぎても就職せず、親のスネをかじって自室に引きこもる青年や、路上で派手なコスプレを披瀝(ひれき)する女性など、日本の若者の生態を特集している。

 背景として、「国内総生産(GDP)の200%もの公的債務」などに示される経済停滞からくる閉塞(へいそく)感などを挙げている。「30歳過ぎても未婚でいるのは世間体が悪いので少女返りしている」とのコスプレ解説には笑ってしまったが。

 ここ10年来、フランスでは日本マンガがブームで、毎年開かれるマンガやアニメの大展示会、「ジャパン・エキスポ」には今年、3日間で約18万の入場者があった。会場や周辺で見られたコスプレ姿には確かに、30歳過ぎはいなかった。「マンガ」がすでに仏語になったのに続き、「ヒキコモリ」や「コスプレ」までそうなりつつあり、嘆かわしいというほかない。

 「中国が日本に代わって第2位の経済大国に」のニュースもトップ級だった。中国の成長率を名目ベースで年率10%、日本を2%と仮定したら、年内に中国のGDPが日本を上回るという一部アナリストの試算を大げさに報じた結果だ。

 日本では、ギリシャ危機とともにユーロ危機が盛んに報じられ、ユーロ消滅、欧州迷走といった解説も幅をきかせていたが、ユーロや欧州への懐疑論が根強い「アングロサクソン情報」(フィヨン仏首相)に振り回された感は否めない。気がつけば円高危機がそれに取って代わり、日本政府の無策や政府不在も指摘されている。

 サルコジ仏大統領はバカンス明けの恒例の大使会議の冒頭演説で、フランスが11月から20カ国・地域(G20)首脳会合の、来年1月からは主要8カ国(G8)首脳会議の議長国になるとし、「独自かつ正当かつ将来の建設現場に不可欠な衝撃を与えるために必要な決定能力を擁する」とG20重視を強調。G20の「事務局長創設」や国際通貨制度の改革を目指し、「専門家によるセミナー」を中国で開催することも提唱した。

 演説で、中国は何回か登場したのに対し、G8重視の日本には、「ユーロ圏の公的財政は米国や日本よりもかなり損害が少ない」という形で1回、言及されただけ。今のフランスの対日評価はそんなところか。

(MSN産経ニュース、パリ・山口昌子、http://sankei.jp.msn.com/world/europe/100828/erp1008280802000-n1.htm