経営者の高額報酬

●「ベアゼロ」「定昇凍結」「一時金大幅減」

 惨敗春闘――。

 ベアゼロや定期昇給凍結に加えて、年間一時金(ボーナス)まで大幅に減額するハメとなった。とくに定昇見送りは、退職金を含めた生涯賃金のダウンに直結する賃金慣行の崩壊そのものだ。サラリーマンをここまで追い込むのだから、業績の悪化を招いた経営者が、社員以上に身を削るのは当然だ。

 日産自動車は、今期、C・ゴーン社長がトップに就いて以来初めての大幅赤字に転落した。2月に取締役・執行役員報酬10%引き下げと取締役賞与ゼロ、執行役員賞与50%カットに踏み切ることを明らかにした。やはり、巨額赤字決算のソニー代表取締役の会長、社長、副社長が役員賞与を全額返上、それ以外の役員は70%減。役員報酬も減額する。

「代表権を持つ3人は賞与と報酬合計の50%以上、他の役員は30%以上のカットになる」(ソニー広報担当者)

 一見、役員も相当の負担をしているように思えるかもしれないが違う。

「数字のまやかしに気をつけるべきです」

 こう指摘するのは、経済ジャーナリストの小宮和行氏だ。小宮和行氏が言う。

「日産の役員1人当たりの平均役員報酬(前期)は3億円を超す。ゴーン社長は推定15億円前後とみられています。ソニーも1.5億円にのぼる。役員報酬や賞与を半分に減らすとしても、彼らの生活はビクともしない。役員は、わずか数年でサラリーマンの生涯年収を軽く稼いでいて、ストックも十分にある。給与ダウンが生活を直撃する一般社員とは比べものになりません」


●業績ボロボロでも億単位のトップ

 似たような事例は枚挙にいとまがない。この1月に決算を下方修正したり、赤字転落した企業の中にも役員報酬を減額するケースもあったが、たいてい数十%ダウン程度。株主や社員の批判をかわす方便としか思えない。

 役員給与をどうするか明確にしていないところもある。

 18日に西田厚聰社長が突然、代表権のない会長に退く人事を発表した東芝は、「役員給与を減額しているが、金額については公表していません」(広報担当者)と口を閉ざすし、16日に古川社長より7歳年上で元同社副社長の川村隆日立マクセル会長のトップ就任を明らかにした日立製作所は、「4月に開かれる委員会等設置会社」の承認を経て決まるという。

 家電メーカー中堅社員がこうぼやく。

春闘の大詰めを迎えての社長交代劇だが、社員にとっては雲の上の話にすぎない。『社長交代をするのだから、社員は賃金カットをのめ』と強要しているとしか思えない」

 みずほ総合研究所の試算では、一時金などの減額により09年度の名目雇用者報酬が、7.4兆円減少すると見込む。これじゃ、総額2兆円の定額給付金をバラまいたところで、景気が拡大するわけがない。

日刊ゲンダイ2009年3月19日掲載)
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