国産水着の大逆襲


 19日まで静岡県浜松市で行われた競泳の日本選手権は、日本新記録が史上最多の20個も誕生する記録ラッシュにわいた。そのうち、国内メーカーの水着を着用した選手によるものは「16」。昨年8月の北京五輪では英スピード社製の高速水着レーザー・レーサー」(LR)が記録を量産したが、今回は国産の巻き返しが際立つ結果となった。日本水泳連盟は20日、世界選手権(7月、ローマ)など今季の国際大会での着用水着の「自由化」を決めたが、日本選手の多くは、信頼を回復した国産水着で外国勢と勝負する。(青山綾里)

 日本最高峰の競泳大会で“異変”が起きた。実施された34種目で、日本新記録が20個も誕生。五輪出場権を懸けて争われた昨年大会は8個で、一気に2.5倍増となった。驚異的な記録ラッシュの要因について、水連幹部は「水着だ」と言い切った。日本代表の平井伯昌ヘッドコーチは「種目ごとに適応する水着も開発され、その影響が大きい」と分析した。

 昨年LRに惨敗した国内メーカーの逆襲が際立った。日本新記録の内訳は、デサント製が13個、ミズノ製が3個、アシックス製が1個(同着含む)で、LRは4個にとどまった。北京五輪で25個誕生した世界新記録のうち、23個がLR着用選手によるものだったが、日本選手権が“逆転現象”の舞台となった。

 「信じられる水着が出たという感じ。体に負担がかからず、泳ぎやすい」とは、デサント製を着用して二百メートル平泳ぎで今季世界ランキング3位の好記録を出した末永雄太。五輪ではLRで予選落ち、国産に戻して記録を伸ばした。

 LRは、無縫製、超軽量化を他社に先駆けて実現し、高速化に成功。国内メーカーは水着開発競争に出遅れた形となったが、スピードアップを望む選手の要望を受け、五輪後も継続して素材や形態を改良する開発を行ってきた。

 デサントは、強力な締めつけで水中抵抗を低減させたほか、ラバー素材を新採用。同社の担当者は「水着が記録を伸ばす道具として受け入れられるようになり、つくる上での可能性が広がった」と話す。ミズノは体形を補正するパネルにスリットを入れる工夫をした。同社の水着開発関係者は「日本の技術の高さには自信がある。そこを証明できたのでは」と胸を張った。

 国際水泳連盟(FINA)は2月に高速水着に対して新基準を決め、メーカー各社は新作水着の承認を待っている状況。日本選手権で着用された水着は、FINAの承認を得なければ国際大会で着ることはできないが、各社とも「規定通りつくっているので問題ない」と自信を示す。

 今季の世界選手権とユニバーシアード、東アジア大会での着用水着について、水連は水着提供契約を結ぶ国内3社(デサント、ミズノ、アシックス)に限定せず、選手が自由に選択することを認めた。だが、選手の多くは「水着との相性は良く、そのまま変えずにいきたい」と話しており、国産水着で世界に挑むことになりそうだ。
(産経ニュース、MSN)